マルチーズのリンパ腫:その治療法や予防法について

リンパ腫とは、血液の「がん」のことで、犬に最も多い悪性の腫瘍です。
6歳~8歳の犬の発症率が多く、治療しない場合1~2カ月で死に至るおそろしい病気です。
初期で気づくのが難しい病気ですが、愛犬がもしかかってしまった時に適切な対応ができるよう、知識をつけておきましょう。

1.リンパ腫とは


  • 血液のがん
  • リンパ腫は、腫瘍のかたまり(しこり)をつくる
  • 6~8歳の犬がかかりやすい
  • 致死率が高く、完治は難しい。

リンパ腫はひとことで言うと、血液のがんのことです。
血液中の細胞成分は大きく分けると『赤血球』『白血球』『血小板』に分かれ、そのうちリンパ球は白血球に属し、主に免疫に関わる働きをもっています。
リンパ腫とは、このリンパ球が腫瘍(がん)化してしまったものです。

リンパ球の腫瘍は大きく2つに分けられ、リンパ性白血病リンパ腫があります。
リンパ性白血病は腫瘍細胞が骨髄や血液の中で増えるため目に見える腫瘍のかたまりをつくりません。
一方、リンパ腫はリンパ系組織の中で腫瘍のかたまり(しこり)をつくります。

リンパ腫はあらゆる年齢の犬で発生しますが、平均的には6~8歳といわれます。
また、大型犬やゴールデンレトリーバーに特に発生が多いといわれていますが、マルチーズのような小型犬もなりえます。

2.リンパ腫には様々な種類があり、治療も異なってくる。


リンパ球はもともと全身に分布しており、リンパ腫も全身様々なところに発生します。
発生した場所によっておこる症状が異なり、また、治療への反応や経過が異なることが分かっています。
犬にできるリンパ腫の約80%が体のリンパ節の複数が腫れる多中心型と呼ばれるものです。
皮膚の下にあるリンパ節の腫れに気付いて、ご家族が動物病院を受診されるケースが多いです。
のどにあるリンパ節が腫れると呼吸がしずらくなったり、いびきをかくようになります。
進行すると、肝臓や脾臓・骨髄内へ入り込んでしまい、本来の機能を低下させてしまいます。
無治療の場合の平均余命は1~2ヵ月とされています。

また、肝臓や腸・皮膚・腎臓・胸の中などにリンパ腫が出来る場合もあります。

3.発生した場所による分類



犬に最も多い「多中心型リンパ腫」では、下あごや腋の下、股の内側、膝の裏など、体表のリンパ節が何か所も腫れるほか、元気が少しなくなる、食欲が少し低下するといった症状が見られることがあります。
症状が進むにつれて、運動をしたがらなったり、食欲不振がおこり、嘔吐や下痢が見られるようになります。
末期では痩せてきて、免疫力も低下し、
肺炎膀胱炎など、様々な感染症にもかかりやすくなります。

「消化器型リンパ腫」では、消化管のリンパ組織やリンパ節が腫れるもので、これにともない下痢や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が見られます。
「皮膚型リンパ腫」では、皮膚に腫瘍として現れるもので、大きさの様々なできものや紅斑、脱毛など、様々な皮膚病変が見られます。
皮膚型は、皮膚に腫瘍ができる脂肪腫肥満細胞腫などの他の腫瘍や皮膚病などと見分けがつかないことがあります。
この他、「縦隔型リンパ腫」では、胸腔内にあるリンパ組織が腫れるもので、これにともなって呼吸の回数が増加したり、咳などの呼吸器症状が見られます。

4.検査方法


  • 注射器でしこりの部分の細胞をとり、調べてもらう
  • 1週間前後で結果が分かる。
  • その他、どこまでがんが進行しているか調べるため、血液検査・レントゲンなど複数の検査を獣医師の判断で行う。

リンパ腫の診断は細胞の検査(針吸引検査)でわかります。
どこまで病変が広がっているかどうか調べるために肝臓、脾臓などの針吸引検査や骨髄検査を行います。
また、他に病気がないかどうかを調べるために獣医師の判断で様々な検査を行います。

5.症状

(1)初期症状:リンパ腫のはれ、しこり


初期症状だと食欲も普通にあるので、病気に気づくのはとても難しといえるでしょう。
しかし、愛犬とのスキンシップの中でしこりに気づき、動物病院に連れて来て早期発見できるパターンも多いようです。

首や顎、かかとや足の付け根にあるリンパ節の腫れは飼い主さんでも分かりやすく見付けやすいです。
健康な犬のリンパ節は、普段は表に出ていないので触っても分かりませんが、腫れてくると丸いボコったとしたものが触れるようになります。

健康チェックの習慣として愛犬に毎日触っておくことで、異変に気付きやすく病気の早期発見に繋がります。
位置については、上の図を参照してみてください。

(2)末期症状:痩せ細る、呼吸困難など



下記のような症状がでてきたら、残念ながら末期症状の可能性が高いです。

・急激にやせ細る

犬も人間同様、末期がんになるとやせ細ってしまします。
どんなに食べても、がん細胞は筋肉さえも分解して病気を進行させるエネルギーにしてしまうのです。

・突然苦しみぐったりする、歩かなくなる

リンパ腫になると、脾臓(ひぞう)が腫れてくることがあります。
限界まで腫れた脾臓が体内で破裂し、大量出血で突然亡くなることが多いです。
おそろしいことに脾臓破裂はその瞬間まで症状がなく、予告なく突然起こります。
突然苦しみ出したり、ぐったりしたりしている場合は、脾臓破裂の可能性が高くなります。
様子を見ずに、できる限り早く動物病院に連れて行き、早急に脾臓の摘出と止血処置が必要です。

脾臓が破裂して手遅れの場合、破裂から数時間〜1日で亡くなってしまいます。

・呼吸困難になる

リンパ腫により胸の中に腫瘍が作られた場合、腫瘍が気管を圧迫して呼吸や咳が出て苦しくなります。
胸の中に水もたまりやすく、更に気管や肺が圧迫されて苦しくなります。
動物病院で胸に溜まった水は利尿剤を使用し尿として排泄させたり、直接胸に針を刺してたまった液を抜いたりする処置が必要となります。

・頻繁に吐く

腸閉塞(ちょうへいそく)になると頻繁に嘔吐するようになります。
リンパ腫により腸に腫瘍が作られることがあります。
腸に腫瘍が出来ると食欲がなくなり、頻繁に吐くことが多いです。
腫瘍によって腸が塞がれてしまうと、食べた物が腸を通らなくなってしまい、命に関わります。


6.治療

  • 残念ながら完治はなく、治療ではなく延命が目的となる。
  • 炎症をおさえるステロイドという薬の投与で、一時的に症状を楽にする選択。1~2ヶ月の延命ができる可能性。
  • 抗がん剤を使用した延命では6ヶ月~1年半前後の延命ができる可能性があるが、副作用との戦いになる。
  • どこまでの延命をするかは、飼い主さんの意志による
リンパ腫の発症の原因が不明です。
残念ながら完治はなく、延命が目的となります。
どこまで延命をしたいかは、飼い主さんが愛犬に残された時間を、「どう過ごさせてあげたいか」という意志によるので、じっくり獣医師と話し合い決断する必要があるでしょう。

一般的な治療として、悪性リンパ腫の治療は診断の確定後、主に抗がん剤の投与などによる化学療法を行います。
抗がん剤を用いての延命が聞いた場合、6ヶ月~1年半生存できることがあります。
しかし抗がん剤治療は、愛犬に貧血やだるさ、吐き気などの副作用のリスクもあることを忘れてはいけません。

また、抗がん剤の選択をしない「残された時間をゆっくり過ごさせてあげたい」という飼い主さんはステロイド治療を希望される方も多いそうです。

ステロイドは抗がん剤ではないので、根本的ながん治療ではなく、一時的に症状を楽にする薬です。
副作用で辛い思いをしてしまう抗がん剤に対して、体へのダメージが少ないステロイド治療は生活の質を優先させたい飼い主さんにとって良い選択肢になります。

また金銭的にも飼い主さんの負担は少ないです。
無治療の場合の余命は約1ヶ月以内ですが、ステロイドはその余命を倍くらいにするにイメージです。

7.予防


  • スキンシップを充分にとり、普段から愛犬の体にしこりがないかチェックする。
  • 動物病院で定期的に健康診断を受診
  • 早期発見につとめる
原因が不明確な病気なので、予防は非常に難しいですが、子犬の時期から愛犬の顎や脇の下をこまめに触ってみて、しこりがないかどうか注意深くチェックして下さい。
リンパ腫の進行は早いため、2か月も放っておけば、あっという間に衰弱する恐れがあります。
早期発見を心掛けることがこの病気の唯一の予防といえるでしょう。

さいごに

いかがでしたか。
リンパ腫は様々な種類があり、理解するのも難しいかもしれません。
また、愛犬が不治の病であるリンパ腫になってしまうと、飼い主さんも精神的なダメージが大きい病気でしょう。
もし愛犬が患ってしまったら、獣医師さんと納得できるまで話し合い選択をしましょう。
診断に納得ができなければ、他の獣医師さんの意見を聞くセカンドオピニオンをするのもありです。
大切なのは、どんな結末になっても愛犬に最期まで寄り添ってあげることではないでしょうか。

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